つれづれ色々綴るブログ

こちらのblogではエッセイを書いています。楽しんで頂けたら幸いです♪

リアル能ある鷹は爪を隠す

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私はあるキャリアショップの代理店で働いている。仕事はシニア向けスマホ教室の講師。1日5時間、週4日のパートタイムで生計を立てている。(いや、正確には貯金を不足分にあてているので立てられてはいない)私と親子ほど歳の違う浪人生の同僚と交代で勤務している。
彼女は若いのにPCが使えない。指示されたことを文句1つ言わずに従うような、内向きな子である。(に見えていた)

勤務したての頃は、満足な研修を受けられないまま実践に駆り出され、2人とも四苦八苦した。それでも何とかなるもので、1、2ヶ月もすると、だんだん慣れてきた。だけど彼女の方はなかなか殻を破れず「上手く言葉が出なくて伝えられないんです…」とこぼすほどだった。
やがて2人で出勤の日でも、お互いの講座の様子を見る機会は無くなり、苦労していることについて報告しあうのみになっていった。

年が変わると教室の運営に関わる業務も増えてきた。私はPCを使う業務をよく任されるようになり、彼女がそれ以外を。しかし1つこなすと、また1つとやる事が増えていく。
実はスマホ教室は教えるだけではなくノルマがある。参加者獲得やアンケートメールの回答だ。それが最近キツくなってきているのだ。
店はノルマを達成しないと利益が出ない。ことあるごとに「受講者の次回予約を!」と言ってくる。そのために、時には2つの講座を同時に開催したり、昼休憩をずらして続けざまに講座をやったりもした。
正直私は人の気持ちの中の、黒を白にひっくり返したり、負を正にするようなことは得意ではない。しかし浪人生の彼女は何故かなかなかの成績をあげている。

ある日2人でいつものように愚痴の言い合いを重ねているなかで、彼女から思いもかけない秘訣を聞いた。
「私はテキスト通りに全部教えていない。客が満足して講座にまた来ようと思えばいいと思っている。上は(上層部は)何でもいいから受講人数を増やそうとしている。何でもありなら教える方も何でもありだ!」と言うのだ!

これまで彼女に対して持っていた、消極的なイメージがガラガラと音を立てて崩れ落ちた瞬間だった。
そんな強かさを持っていたとは!!しかも彼女がその手法に行き着いた理由がいかにも浪人生らしい。
ある有名な塾講師の人気の理由が、「覚えさせる事ではなく、勉強の楽しさや、モチベーションをあげてやること」だったと知ったからなんだそう。

さっそく私も次回から教えるボリュームのある講座で真似をするとしよう。
それにしても、若さなのか?地頭が柔らかいからのか?それとも元々そういう発想のできる子だったのか?
つくづく色んな意味での自分の無能さを痛感している。